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2006年9月17日 (日)

国宝 風神雷神図屏風 ―宗達・光琳・抱一 琳派芸術の継承と創造―

出光美術館で開催していた「国宝 風神雷神図屏風 ―宗達・光琳・抱一 琳派芸術の継承と創造」という展覧会を見に行って来ました。

http://www.idemitsu.co.jp/museum/index.html

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江戸初期に、俵屋宗達が残した最高傑作、国宝「風神雷神図屏風の完成のおよそ七・八十年後に、宗達を慕い琳派の後継者を自負した同じ都の絵師・尾形光琳によって、模作がつくられていますそしてそこからさらに一世紀ほどを経て、幕末に東国江戸で琳派を再興した酒井抱一が、あらためて光琳画から模作をつくりました。これら三つの作品を一堂に展示しています。素人の直感的な感想は、やはり初代宗達が一番いいです。模写した光琳、それをまた宗達の模写と知らず模写した抱一と、時を経るごとに、二人の獣神が漫画チックに変容していくさまが面白かったです。ただこれをDNA模写のようにだんだんオリジナルが劣化していくと見るのは早計で、宗達の作品は色もあせており古色がつき、素人にはなんとなく有り難く見える側面も有ると思います。平安時代の東大寺が赤緑と金箔で覆われ完全に中国風デザインのコピーだったさまをいまの我々が想像できず、かつそのさまには恐らく敬意を払えないであろうことと同じです。

 逆に光琳はやはり「かきつばた」の豪華絢爛な屏風のほうが名作ですね。風神雷神はたぶん自分の心覚えのための模写だったんでしょう。なお宗達は扇子屋さんを経営するデザイナー、光琳は公家、大名、役人など、多くの庇護者やパトロンをもつ欧米と同様の中世の絵描きの典型、抱一は大名家の次男で光琳に私塾し江戸琳派の創始者といわれますが、すこしだけ作品を見た限りでは「まじめな研究者・愛好家」の域に留まっているようにも思えます。出光美術館の収蔵品に抱一の「かきつばた図」が有るのですが、写真で見る光琳のかきつばたより鮮度が数段落ちて見えました。

 私が特にこの展覧会が素晴らしと思ったのは、その三代の絵師の作品をただ並べるだけでなく、あるいはただ研究者の記録を文字データで掲示するだけで終わらせず、私らのような素人にも充分知的好奇心を満足できるよう、よく考えたプレゼンテーション手法が施されていたということです。三人の絵師の作品はそれぞれ部分ごとにアップ写真パネルを掲示、同異を解題してあったり、文字情報を単なるプリンタ出力パネルではなく、紗がかった布のタペストリに印刷したり、先に三作品を見せておき、そのあとゆっくり解題するという構成で、導線も工夫されていました。

 国営の美術館が海外の有名美術館の作品レンタルで汲々とし収蔵作品展に工夫が少ない中、あるいは東京都写真美術館や水戸芸術館がキュレーターのセンスによるエッジの立った先鋭的テーマを行い素人感覚と乖離しがちなのに対し、一見地味ながら、知と美をきちんとリンケージしたこの試みはとても新鮮でした。これからの日本の美術館のベクトルを示唆するとまで言ったらおおげさでしょうか。

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コメント

この展示会のキュレーターはただものでない、と思っていたら朝日新聞にインタビューが載るなどしました。その名は内藤正人さん。三作品の同時展示は長年の夢だったそうです。ええなあ、仕事でのロマンが実現できるなんて。
http://www.fujitv.co.jp/event/art-net/go/369.html

投稿: がらんどう | 2006年10月 2日 (月) 02時09分

宗達の特に風神については、肌の地色がもう少し鮮やかな緑だったろうと言われています。
そして、明らかに他の二人と異なるのは、宗達が人外の者を描くという意思を強く持っている点でしょう。これは展示にもあった目や手の描写に見て取れます。
ご指摘のように、デフォルメの手法その他で時代が下るほど進むということはありますね。

ところで、日経に上野の東博の表慶館の大修理の記事がありました。なんでも明治時代に建設当時の内装は薄黄色の壁色に薄緑の調度だとわかったとか、そのとおり復元するそうで、10月のオープンがこれまた楽しみです。

投稿: ゆずこせう | 2006年9月18日 (月) 11時34分

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