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2008年2月 4日 (月)

城塞

この赤土の丘陵の上に建つ城で過ごした日々は夢だったのか

夜警が誰何し、それに答える者たちの相貌の記憶は曖昧だ

脂の燃える嫌な匂いを放つ篝火に照らされて

崩れかけた煉瓦の壁に横たわる我が身からは

既に若い頃の力は失われている

明日の朝を迎えれば墜ちる定めの城と王国に未練は無い

己の流離の人生にも省みるべき何事も無い

惜しむらくはこの世に我が身の生きた証を何も残せなかった

人生は危ういバランスの上の細い一本の糸

どこに有るのか、それを探して彷徨う一生の最後に

探し物は結局自分の中に有ること悟った時は

落城を前にした最後の夜だった

恐らくは王であろうと娼婦であろうと

城塞の内に住まう物はなべて

結局は己が最後に瞬間にしか

その事実に気がつかないだろうが

自らもまたその陳腐な定めにとらわれていたことに

苦い笑みを浮かべながら

刃の毀れた剣に最後の油をそそぐ

人生はまばたきのごとく脆いもの

現れた時は知らず、消えるときのみ知覚できるもの

そろそろと白み始めた東の空に

苦い後悔の念だけが拡がっていく

終わりの始まり

赤い獣脂の篝火だけが

私の横顔を照らしている

城塞のひとびとは消え行く定め

篝火は朝の光に消え行くもの

終わりの始まり

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