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2009年3月11日 (水)

池上永一「シャングリ・ラ」読了

すでに「テンペスト」の単行本が書店の平台に乗っている時期なんですが、逆に相乗効果での販売のため旧作「シャングリ・ラ」が文庫になったので、はじめて池上永一という人の小説を読みました。
 文庫本の表紙がペ-テル・ブリューゲルの「バベルの塔」で目を引いたのと
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、解説を筒井康隆大先生が書いておられたことから買ってみました。あとで気が付いたのですが、単行本時代は表紙がマックス・エルンストの最高傑作「雨後のヨーロッパ」だった。
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この作者、シュールレアリスムファンなんでしょうか。ただこのときは嫌いなライトノベルごときがエルンストを表紙に使うなぞ、しゃらくさい、と思っていました。
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アマゾンの解説を引用すると「21世紀半ば。熱帯化した東京には巨大積層都市・アトラスがそびえていた。さまざまなものを犠牲に進められるアトラスの建築に秘められた驚愕の謎とは--? まったく新しい東京の未来像を描き出した傑作長編!!

加速する地球温暖化を阻止するため、都市を超高層建造物アトラスへ移して地上を森林化する東京。しかし、そこに生まれたのは理想郷ではなかった!CO2を削減するために、世界は炭素経済へ移行。炭素を吸収削減することで利益を生み出すようになった。一方で、森林化により東京は難民が続出。政府に対する不満が噴き出していた。少年院から戻った反政府ゲリラの総統・北条國子は、格差社会の打破のために立ち上がった。」
 感想を一言で言えば、暇つぶしエンタメとして私としては十分に楽した。
文庫本解説の筒井先生がこの作品の長所であり短所でもある「すべてにおける過剰さ」を指摘されているので、まさにその通りなんですが、いっぽうもともと雑誌『Newtype』に連載されていたらしく、まごう事なきライトノベルである。主人公は女子高生だし、話は「アキラ」の世界観に「ナウシカ」ばり女子高生ヒロインが出てくるし、ロジックが破綻すれば荒俣宏「帝都物語」の怨霊で辻褄を合わせてしまうという、荒唐無稽なストーリー展開。ライトノベルたコミックの世界ではこういうのはお約束として当然なんでしょう。「銀魂」とか「ナルト」のような時代劇とSFがごっちゃになるだけで違和感を覚えてしまうような私らおぢさんには、ここらへんがつらいところ。ただし炭素経済、カーボニストという、ちょっと村上龍ばりの近未来経済小説的な仕掛けがベースになっていることと、あともうひとつ、圧倒的なスピード感には酔えます。稚拙でご都合主義的なストーリテリングとこの疾走感や部分的な先進性を差し引きして「私についていえば、エンタメとして十分楽しめた」と書いた訳です。
 なにかこういう方法論で似ているものが有ったような気がする?と思ったのですが、それはアメリカはFOXのTVドラマ「24」でした。もちろんあっちのほうがデティールにおけるリアリティはすごいのですが、ご都合主義的ストーリー展開(主人公は何度も死にそうになるは、同僚も恋人も次の回には敵になったり等々)を、圧倒的なスピード感で見せ切ってしまう方法論がそっくりなんですね。なんでも09年春にはアニメ化されるらしいので、さもありなん。ですね。
 小説としては筒井康隆先生もご推薦の「テンペスト」文庫化に期待しましょう。

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コメント

池上永一は『バガージマヌパナス』が大好きで、その後の何冊かも読んでいるんですが、何というか、「自分の身の丈」で書いているような印象の『バガージマヌパナス』が、やはり一番面白いように思います。文春文庫だったかな? 薄いのですぐ読めます。お暇な時にどうぞ。

投稿: かば◎ | 2009年5月14日 (木) 02時48分

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