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2009年9月22日 (火)

スリー・フレンズ 来日ギグ 2009

Poster

スリー・フレンズ 来日ギグ 2009

 70年代~80年まで活動していた、通向け(要はマイナー)なプログ・ロック バンド、Gentle Giant(ジェントル・ジャイアント)の元メンバーのうち、職人的ミュージシャンを続けてきたメンバーがだんだん集まって結成したのがスリー・フレンズです。ロック、クラシック、ジャズ、古楽その他が織り合わさったような変拍子ばしばしの曲を、ギター、ベース、ドラム、オルガンだけでなく、バイオリン、チェロ、鉄琴(しかも全員演奏有り)、木琴(しかも超早弾き、トランペット、アルトとテナー。サックス、リコーダー(しかも全員リコーダー合戦有り。BOCの全員ギターの迫力は有りませんが)などの各種楽器と超絶コーラスワーク(クイーンやユーライア・ヒープの比ではない巧さ。ただしロック的では全く無い)で知られ、普通のフォーマットのロックではないため、一般的なロックファンはおろか、イエスとかピンクフロイド、ELPあたりのメジャー・プログ ファンにも興味を持たれませんでした。もしかしたら、当時から少数派だったカンタベリー・ツリーのファンにすらも聞かれていなかったかもしれません。一応、カンタベリー「一派」と派閥名称は有るんですから、そういうカテゴライズからこぼれたジェントル・ジャイアントはファンが当時から少なかったでしょう。
 彼らのサウンドをたとえて言うと「納豆にマヨネーズをかけて食べるような」感じです。変わった曲を変な(しかし巧い)バンドが演奏する。かなりハード・ロックぽいパートも多いのですが、超絶コーラス合戦とか、弦楽器の演奏など、どうもシンプルじゃないことが理解の和を広げる妨げになったのだと思います。そのかわり、30年たっても古びない、飽きないサウンドです。中心事物のうちシャルマン三兄弟(途中で長兄が脱退)がパワーポップ志向であり、キーボードのケリー・ミネアが王立音楽院卒業の理論的音楽家であったことが、この極めて稀なる相乗効果を産み出したのでしょう。ただし一回や二回聞いただけではその良さ(あるいは深さ)が理解しずらいため、結局メジャー・シーンで出ることは有りませんでした。
 プログレ冬の時代(パンクという流行歌のせい)を乗り切れず(後期は後期で、パンクというより、10CCとかゴドレー&クレムぽい部分もあり私は結構好きですが)、解散してしまいました。その後、中心人物のシャルマン兄弟のうち、中の兄いレイ・シャルマンはポリグラム、ATCO等々アメリカのレコード会社の副社長(いまはロードランナー・レコードの社長)になり、ボン・ジョビやらシンデレラ、バッド・カンパニー、AC/DC、パンテラなどのマネージ?(signed)をするなど、まさにMr.Class&Qualityになりました(後述)。弟のレイ・シャルマンはCM等の作曲家やプロデューサーに転じ、いまや大メジャーのビヨルクがプロとして最初に属したバンド、シュガーキューブスをデビューさせています。
 三枚目のアルバムだけ参加した影の薄いドラマー、マルコム・モーティマー(バイク事故で脱退せざるを得なかったが、後任のドラマー、ジョン・ウェザースの腕が良く、彼が参加した4枚目のオクトパス以降、GGの音楽は切れが良くなった)が、2008年10月にGG残党、ギターのゲイリー・グリーンと組んで、Rentle Giant(Re-GentleGiantの意か?)というGGの曲を再演するバンドを昨年作ったところ、これにGGの中心人物のケリー・ミネアと、現10CCのヴォーカリストのミックが加わって、スリー・フレンズという「結果的リユニオン・バンド」が出来上がったそうです。


 そんな彼らが2009年9月、初の来日をしました。こういうマイナーな70年代ロック リユニオンのコンサートは、客数が少ないため客単価が高くなるのが厳しいところ。今回もVDGGと同じオフィスオオサワさんが呼んでくれました。オペラやオーケストラほどの値段じゃないでしょうけれど、それでも14,000円は、ドーム・クラスのメジャー・バンドよりも高いです。よって私が行けるのはは明日のマチネ一回のみ。
 ここ一ヶ月i-Podで英国等のギグのセットリスト曲をおさらいでしてましたが、どうしてもメロディと曲名が一致しにくい曲もありますね。
 ちなみにThree Friendsというバンド名は、GGの三枚目のアルバム・タイトルであり、今回の発起人である影の薄いドラマー、マルコム・モーティマーが在籍時の唯一のアルバムでも有ります。つい先日、紙ジャケで再発されたCDを買いましたが、リマスター/SHM CDなのでかなりいい音になっていると思います(すいません、まともな再生装置が無いので断言できないのですが)。特にLP時代はオクトパスまでのヴァーティゴの音はもこもこ篭り気味で、かなりバンドの価値を落としていた側面がありますので、音質向上は嬉しい限り。


青山の会場はかなりこじんまりとしたライブハウスで、その小ささにびっくり。
          
   
 席数は100から150程度でしょうか。多分200席はないでしょう(私にとっては、20代の頃勤務していた池袋西武のアート・スペース、スタジオ200が未だに席数の基準値なのです)。日本のアマチュアミュージシャンでも人気があればもっと広い箱で演奏するでしょうから、ジェントル・ジャイアントの知名度はやはりこの程度なんだなあ、と改めて実感。ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターよりも少数派なんですね。1回150人として、公演回数が9/19(土)マチネ、9/20(日)マチネ、夜、9/21(祝)マチネの4回計600人×平均客単価1.4万円とすれば、計840万円。前公演地・カナダから日本までのエア代、あご(食事代、これは自腹か?)、まくら代(宿泊費)、ギャラ、会場費、PR費その他をこの予算でまかなうのは相当タイトだと思います。上記はもちろん勝手な概算です。

 さて、おじいさん達(といっても60歳代ですが)、皆さんお元気。キーボードのケリー・ミネアはすっかり髪の毛が白くて薄くなっていましたが、細いまま。ギターのゲイリー・グリーンは半分はげてかわりにヒゲを林、また相当太り、まさに私のの容姿と同じ。ドラムのマルコム・モーティマーはそもそもアルバム「スリー・フレンズ」一枚だけのメンバーなので若い頃の顔を知らないのでなんともいえず。ちょっと病的に細い(でもお腹は出ている)感じでした。
 サポート・メンバーではなく実際はスリー・フレンズのオリジナル・メンバーに当たる、ジェントル・ジャイアント組以外の4人は、肉食系欧州人壮年老年そのもの。ベースのロジャー・ケアリーは落ちぶれた(失礼)ジョン・ウエットンといった感じ(ただしあそこまで太ってはいない)、ヴォーカルのミック・ウィルソン(from10CC)はふつうのおっさん。デレク・シャルマンよりキーが高いようですが、その分シャープになっていました。ケリーと二人体制になってしまったキーボードのジョン・ドナルドソンは淡々とリズムパートを挽いていましたが、ブギーやシャッフルぽいパートでは、ケリーではなくこのジョンがソロを取っており、全くのサポートメンバーではない配慮もありました。もうひとりの余剰?!(失礼)人員、ギターのアンディー・ウィリアムスは容姿より、愛器なのであろうセミアコ・ギターの塗装がはげて艶もなく、とっても貧乏そうに見えてしまい、可愛そうでした。
 ギターのゲイリー・グリーンはなかなか茶目っ気のあるオヤジで、後半の曲えサイド・キーボードのジョン。ドラルドソンのキーボードでエンディングの一音を指で押してしまったり、アンコールで出てきたときに「ほらさあ、俺達もう歳だからさあ、大変なんだよね」みたいな事を呟いて客席を笑わせたりしておりました。MCもゲイリーでしたね。


 ジェントル・ジャイアント(以下GGと約す)のアルバム「スリー・フレンズ」は出来としては、全アルバム中、中の上レベルですが(やはり初期は4枚目オクトパス、中期は7枚目フリーハンドが傑作と言えるでしょう)が、唯一のトータルコンセプトアルバムです。三人の学友がそれぞれ、大工(というかガテン系)、絵描き(アーティスト)、サラリーマン(エクゼクティブ・クラスの)という別々の道を歩むことになり、人生はもう交わらない、というほろ苦いストーリーです。
 今回のバンド名「Three Friends」は、このアルバムのオリジナル・ドラマーであり、スリー・フレンズの母体「Rentle Giant」(Re-Gnntle Giantの意?)を結成したマルコム・モーティアが唯一GGに在籍したときのアルバム名を、そのままバンド名にしたものです。しかし、在籍していたからという理由だけではなく、深読みすれば、このアルバムのストーリー自体をライブで再演したかったのでは無いでしょうか?つまり、やや自虐的に、このバンドの存在意義やポジションを語るのに、アルバムのコンセプトを援用しいているのではなかったのでしょうか。スリー・フレンズのGG組三人は未だ現役ミュージシャン(アーティストですが、60歳後半を過ぎて極東の100人規模のライブハウスで演奏しているのですから、はっきり言って経済的側面だけから言えば到底成功者とは言えず、それでも夢をずっと追い続けているわけです。曲名で言えば「Peel the Paint」。一方、1980年に解散してから、シャルマン兄弟は、中兄がアメリカのレコード会社の副社長を歴任、弟はイギリスでプロデューサーとしてシュガー・キューブスをヒットさせるなど、恐らくは相当の(一定の)成功を修めたビジネスマンになりました。曲名で言えば「Mr.Class & Quality」ですね。
 今回のツアーはマルコム在籍時ということもあり、アルバム「スリー・フレンズ」の曲が多いのですが、なぜか「Working All Day」だけ演奏していない。かなりハードロックっぽい曲でコンサート映えするのに、あるいはこの曲も演奏すればアルバム完璧再現になるのに何故?

 コンサートが終わってから気が付いたのですが、もしかしたらマルコムとゲイリーはシニカルに自分達の生涯を、「絵描きのピール」に例え、バンドマンを辞めたシャルマン兄弟をミスター・クラスに例えて、このバンドの演奏曲目を決めたのかも知れません。ドカチンは元メンバーにいないのだから、「Working All Day」は演奏する必然性が無いのです。またアンコールに応えた最後の曲が彼らの曲の中ではメジャーでサウンド的に映える「Freehand」ではなく、「絵描きのピール」であることも、象徴的ですよね。

 さて演奏ですが、「変わった曲を」「変わったバンド」が演奏するのがGGだったとすれば、スリー・フレンズは「変わった曲」を「普通のバンド」が演奏する形に変わったので、GG時代のライブのような楽器早取替え競争みたいなサーカス芸的な楽しさは無くなった一方(雑誌ストレンジ・デイズで、GGの音楽をサーカスと括ったタイトルにした評論者がいましたが、あれは本質からずれたパーシャルな部分だけにフォーカスした物言いなので、寂しい気持ちになりました)、演奏がタイトになった分、曲の聞こえ方がソリッドかつシャープになり、これはこれで楽しめました。みなさん、楽器の腕は結構いいのでしょうし、練習も相当したのでしょうから、難曲揃いのGG楽曲群もかっこよく聞こえました。またケリーの「シロフォン(木琴)」早引きプレイとか、トランペットなどはシンセサイザーで代用、コインの廻る音やフリーハンドの指クラップ音などもサンプラーで音採りしてあったので、再現はされていました。名曲「Boys in the Band」のイントロがもうちょっとタイトだったら良かったですけど、それでもこの難曲をあまりミス無く弾き切れるというは、すごいことです。
 全体からすれば、ブランドXのような超絶テクのジャズロックバンドっぽくなっていたと言えば、分かりやすいかもしれません。中期の油の乗った時期のアルバム「イン・ナ・グラスハウス」の「Runaway」、「パワー・アンド・ザ・グローリーの「Cogs in Cogs」などのハードでソリッドな曲も聞きたかったのですが(アルバム自体としてもオクトパス以降のほうがレベルは高いと思うし)、もしも上記のような私の穿った見方が当たっているのだとしたら、地味なアルバム「スリーフレンズ」にフォーカスを当てる必然性が有ったのでしょうから、中期の曲はやや割愛されたということですね。後期のパワーポップ時代は当然オミット。
 なおオフィス・オオサワさん得意の「先にチケット買わせて、後からファン感謝イベントや追加公演を仕込む」パターンは今回もあったのですが、初日などはそれが無くても、ケリーが演奏後客席に来て握手とかサインとかしてくれたそうです。二日目のマチネの後ではそれが無かったので残念。


<セットリスト 9/20 マチネ)
Prologue
Playing The Game
The Advent Of Panurge
I Lost My Head
Pantagruel's Nativity
Just The Same
Empty City
Think Of Me With Kindness
The Boys In The Band
 ~band intoroduction~
His Last Voyage
The House The Street The Room
School Days
Mister Class And Quality
 ~encore
Free Hand
Peel the Paint(
ゲイリーとアンディのギター・ソロ&ユニゾン・バトルあり)


 さてさて、こういう70年代ロックのリユニオン・バンドを聞けるのもしかし、そろそろあと数年で終わりということになってきましたね。ベンチャーズみたいに70歳代でもライブをやれば別ですが、体力のいるロックでは難しいですよね。昔、仕事でよいよいになった時代のレイ・チャールズのコンサートにかかわりましたが、定番の曲をギ実的に演奏し、しかも体調不良で30分で降板しました。これってやっぱりプロの仕事じゃないですよね。ロッカーにはそういう金欲しさだけの仕事はして欲しくないと思います。
 とまれ、VDGGとGGという、私個人にとって中学生、高校生の頃の二大プログレ裏 黄金バンドを、生きているうちに聞けたので、もうあまり無いものねだりはしません。
 逆に大物であるイエスにはそれほど興味が無かったので、数年前のアンダーソン脚骨折快気祝いライブに行かなかったので、もう一回来日してくれないでしょうか。



Three Friends公式サイト(サーバーの回線が細いようです)
GentleGiant 公式サイト
上記のうちスリー・フレンズ関連

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